━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.13
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

http://www.kaitaku.gr.jp/

---------------------------------------------▼INDEX▼

 「北海道地域国家宣言」と「第2の札幌農学校」
  太田 清澄

  編集後記

   …………………………………………………………
                   2003年12月15日

   …………………………………………………………

「北海道地域国家宣言」と「第2の札幌農学校」
  太田 清澄


本州のど真ん中に生まれ育った私にとって、18歳の時暫しの夢を見さ
せてくれた北海道に対する最後の拘りと思いながら、気がつけば10年
間私なりに発信をし続けた結果はなんであったのか。己の力の無さと限
界を痛感するとともにそれだけではない大きな無力感を覚えていた。

もやもやした気持ちを引きずりながら、先日とある会社の設立パーティ
に招かれ、そこで2人の人物に出会った。
私の前には、黒田清揚氏と榎本隆充氏という名前のお二人が並んでい
た。
名前からもお気づきのとおり、黒田清隆、榎本武揚を曽祖父にもつお二
人であった。
この場に集まった人達が、これは余りにもできすぎた状況設定と思うこ
とについては、私自身は否定も肯定もするつもりは全く無かった。
そんなことよりも、私が2人の間に立たされたときに、いやおうなしに
榎本武揚が展開を図った「蝦夷共和国」とその理論的背景となった「国
際法」に論拠を置く「交戦団体」の定義に思いをはせざるを得なかっ
た。
そして奇しくも、その2日前には西村英樹氏が少し前に亡くなったこと
を、彼の非常に親しかった友達であるシアターキノの中島洋氏から聞か
された。
彼とは一度とにかく会いたいと思いながら、徒に時間がたってしまい、
結局は会わずじまいのままに全てが終わってしまった。
ご承知の人が多いと思うが彼は「夢のサムライ」の著者である。
戊辰の役や函館戦争を指揮官として戦い、後に開拓使のエリートとして
活躍し、北海道にビールの始まりをつくりながら、そして当然将来を約
束されながら、突然に官を辞し、身元不明の行き倒れの人として逝った
薩摩隼人 村橋久成の生涯を綴った書である。

生意気を承知で言わせてもらうなら、二つの出来事が、今一度だけ私の
心を北海道に引き戻した。

意志と叡智と戦略があれば北海道の未来の可能性は必ずやある。
この未来の創造に向けて、10年来の私の拘りである地域国家を宣言す
る日のために、意志ある人の集結をどのような形であれ図ることを呼び
かけたいと思う。


道州制という考え方については、少なくともこの数年色々な場面で議
論されてはいたが、先般の小泉首相の発言から、北海道にとってはおそ
らく思惑以上ではなかったかと思うほどに、道州制の動きが加速されよ
うとしている。
基本的には、どこかの今はなき都市銀行でやられたように、試し打ちで
あろうと捉えようが、捉えまいが、少なくとも絶好の機会と考えこの流
れに乗るべきであると思う。
しかし、大きな枠組みが何も変わらないままの中での道州制導入で、果
たして北海道が持続可能な地域として生き残れていけることが可能なの
か、私にはその青写真は描けない。
大きな枠組みが変わらないこと、すなわち根本的には何一つ変わらない
中央政府の姿・形とそこが決める法・規制の中で、仮に財源を委譲され
ても(決して収入委譲ではない)、一部の権限を委譲されても、果たし
て北海道は自賄いができ、持続可能な地域として生き残れていけるか、
この結論は見えているような気がする。

少なくとも青写真を描くための選択肢は二つあると思う。
一つは大きな枠組みを変えた上で、北海道を手始めにそれぞれのブロッ
クで道州制をはめ込んでいくプログラムである。
二つ目は、大きな枠組みを変えることが時間的に、制度的に、さらに末
梢的な理由例えば既得権益等を守らんがための抵抗により不可能であれ
ば、北海道における道州制の性格づけを根本から違ったものに読み替え
ることである。

道州制の性格づけを根本から違ったものに読み替えること、この答えの
ひとつにあるものが「地域国家」の考え方である。
「地域国家」の枠組みを具体化する過程においては、避けては通れない
リスク(痛み)を覚悟する必要がある。
多くの人が、「中央依存の体質が極めて強い北海道にリスクを負う覚悟
があるのか、よしんばリスクを負う覚悟をよしとしても、根本的に自律
できる地域構造が構築できるのか」を問うであろう。
私は北海道のもつ潜在力があれば、十分に「地域国家」がつくり得ると
思う。
逆に将来において全国にいくつかの、おそらくはこれまでの議論からす
ると10箇所ぐらいの道州ブロックができることが想定できるが、この
中でグランドデザインとして「地域国家」を宣言できる特性、潜在力を
持っているのは極めて限られると思う。

地域国家の基本的枠組みは次の二点に要約されると思う。
   防衛と外交等日本国の存在にかかわるもの以外の法や制度は北海
道地域国家で決める。
    域内(地域国家内)で経済的に自律する。(自賄できること)
当然1と2は密接不可分な関係であり、自賄いしていくために、遡及的
に独自の法や制度を制定していくことは必然となる。

域際収支が約マイナス2.5兆円、公共事業依存等々の地域が果たして
自賄できるのか。これもまた必ずやでる問いである。
この問いの前に、逆に何度も問い返すのは、中央政府が何も変わらない
中で単に北海道に道州制を導入されても、生き残っていけるのか、持続
可能な地域としていつまで存在していられるのか答えられるかというこ
とである。

当然この枠組みのスタートは、自らの生活レベルのそぎ落としが大前提
となる。
仮説として、北海道民全員の収入が7割になることからスキーム(手
順)を描いてみる必要があると思われる。
言わずもがななことは、収入が7割になっても、生活の質が7割になる
ことではない。オランダモデルといわれる「ワークシェアリング1.5
モデル」でジョブとライフのバランス見直しによる「豊かな生活」の選
択も生まれる。
もうだいぶ前にスウェーデンの知人と7割論の議論をした時に、彼らの
賛意と、スウェーデンにおけるパラダイムシフトの話を聞かされた。
「自分たちのパラダイムシフトはラーゴム(ほどほどの生き方)だ
よ。」
後半のスキームについては、分かり易く言い切れば、そぎ落とされた収
入総量に見合うお金を北海道の地域として稼ぎ出すことに尽きる。
叡智と戦略の部分である。
前回石黒さんが新千歳空港の戦略論を展開されていた。
これも将に北海道地域国家を前提とした稼ぎ方の重要なメニューであ
る。
このように、意志ある人がそれぞれの得意とする範疇で叡智と戦略を図
り、具体的なメニューを重層化していくことが求められるが、基本軸は
やはり農業にあると思う。
あまりにも言い尽くされているがゆえに、真剣な議論がなされてきたか
は、疑問である。

わが国の食料自給率がカロリーベースで42%ということは、改めて考
えてみると、海外で1200万ヘクタールもの農地を借りて食料需給を
満たしていることに他ならないことである。
また小麦に限ってみても現在のわが国の輸入量が年間600万トンであ
るが、これは36億立方メートルの水を生産地で消費させていることで
ある。
この水の量がいかほどのものであるのか、これは将に大阪市の水消費量
の7年分に相当する量とされている。
少なくとも地球環境等を含めたグローバルな視点からも、このような状
況が特定な国にのみ許されていることがいつまでも認められるとは思わ
れない。
この課題解決において、北海道地域国家の中央政府に対する優位性が働
くことになる可能性は極めて高いと考えている。
「お荷物北海道」ではなく、「助けてやっている北海道」ではなく、中
央政府にとってなくてはならないパートナーとしての誇りを持った北海
道地域国家であるべき枠組みを求め続けたい。
 ヨーロッパの「4つのモーター」と呼ばれる地域構造は、バルセロナ
やミラノ、デュッセルドルフなど相当に離れた都市間の連携である。
 「北海道地域国家」は中央政府と有利に協働もしくは対峙する場面に
おいて、距離の離れた「首都圏地域国家」と食料・環境(農業)の政策
協定のもとに連携する、したたかな戦略もあり得るのかもしれない。

翻るに、やはり自賄するための「骨太の主食」は農業である。
これまでにも産業としての育成を試みてきたIT関連産業において、北海
道の地域優位性は見出せ得なかった。やはり「骨太の主食」と連携する
IT
関連産業であってこそ始めてその優位性があったと理解されている。
この総合性を付加した農業を軸に自然資本・制度資本・社会的資本から
なる「社会的共通資本」という新しい概念を導入したサスティナブル・
デベロップメント(持続可能な地域構造の構築)のグランドデザインは
間違いなく北海道では描けると確信している。

「三井物産戦略研究所」の寺島実郎氏が北海道をめぐる一連の理論展
開の中で、「真のビジネスモデル・エンジニアリング」の必要性とその
具体化のために「地域戦略研究所」づくりを提言している。
 過日、寺島氏と意見交換する機会があり、その折に私は、「寺島さん
が提言されている内容は、将に中核地域に第2の札幌農学校をつくるこ
とに他ならないのではないか。」と投げかけた。
 「北海道地域国家宣言」と「第2の札幌農学校立ち上げ」を最後の夢
に、いま少し歩き続けることもありうるのかと思っています。

明日は、今日封切られた「THE  LAST SAMURAI」を見にいこうと思い
ます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                     2003年12月15日

つるつる道路の季節が始まった。移住して10年、北海道のいろいろ
なことにはだいたい慣れてきたつもりであるが、このつるつる道路は
どうしても慣れない。せっかちな元関西人の私が、この時期はペンギン
歩きゆえ、おおらかな道産子にスイスイと抜かれてしまいかなり悔し
い。ススキノでは酔っ払って勢いよく滑って宙を舞うサラリーマンが冬
の名物?となって久しい。
とはいえ、雪を踏みしめて磨いたように凍った道路は、本当にヒヤヒヤ
しながら歩いているし、骨折や救急車にお世話になる市民も多くいるこ
とは事実だし、ましてや高齢者や妊婦にとっては外出もままならない深
刻な問題だ。
行政からは対策として、砂箱の設置箇所を増やしたり、交差点で氷を
溶かす器械を付けている、と返ってくるし、11月に発行された札幌市の
情報誌には「札幌は世界からも除雪システムの先進都市といわれ・・・
特に車道の除雪率は96.3%、歩道は93.2%、ほとんどの道路を
網羅し・・・冬でも快適な生活を満喫できる札幌」とある。が、実際、
靴底を張り替えたり、とにかく注意深く歩いたりと、今のところ
市民は自衛する他に手立てがないのが現状だ。
札幌の今度の市長は確か自転車通勤がトレードマーク。このつるつる
道路について市民の目線でよいアイデアを発揮していただきたい
ものだ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

WEB】 http://www.kaitaku.gr.jp/
MAIL mm@kaitaku.gr.jp
 --------------------------------------------------------
【発行】NPO法人 私設北海道開拓使の会(FAX : 011-252-0406
【編集】太田 明子

 本メールマガジン掲載記事へのご意見、編集長からの質問へのご回
答など、読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載
させていただく場合があります。匿名などのご希望があれば、明記し
てください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。
 メールに記載された範囲でのプライバシーの公開から生じる、いか
なる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承くだ
さい。
『私設北海道開拓使の会 メールマガジン「異論・暴論・創論」』の
著作権は、それぞれの執筆者に帰属します。原稿の転載等を希望され
る方は、私設北海道開拓使の会 事務局までお問い合わせください。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/
利用して発行しています。
 
 解除はこちら http://www.mag2.com/m/0000102356.htm から。
 講読申し込み http://www.mag2.com/m/0000102356.htm から
 バックナンバーは 
     http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000102356