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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.17
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 「農業の魅力向上〜農業がかっこいいといわれる時代へ〜」
   太田明子(当会理事)


  編集後記

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               2004年4月20日

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農業の魅力向上 〜農業がかっこいいといわれる時代へ〜
太田明子(当会理事)

北海道ではスローフード運動が盛んになってきた。
北海道農政部のHPからその趣旨などをピックアップしてみると「ス
ローフード」とは、「ふだん漫然と口に運ぶ食べ物をじっくりと見つめ
なおすことを通じて自分たちの暮らしや生き方、家族との関係、自然環
境、地域社会などを問い直そうという提案。単なるグルメ志向を促すも
のではなく風土に根ざした食文化を見直し、その地域に伝わる食材や調
理法を守っていこうとする哲学に基づく実践的活動」とある。この思想
は1986年、北イタリアの小さな町でスローフード協会が発足したこ
とに始まる。

北海道では昨年7月に「北海道スローフード協会」「北海道スローフー
ドフレンズ」(ともにイタリア本部登録団体)」という2つの団体が発
足。講演会などを各地で開催しはじめ、また北海道じゃらんなどが「地
産地消」などの啓蒙に努め、道内ではスローフードへの意識が序序に浸
透しつつある。

札幌では大丸百貨店のオープンや各デパートのデパ地下(食料品売り
場)の改装などが相次ぎ、グルメ傾向に熱が帯びてきたようにも思われ
る。北海道物産展を始め北海道の地元の食材や食品が所狭しと並べられ
ている。一方、北海道農業の現状を見てみると、農家の高齢化、離農、
借金、自由化による価格崩壊、新規就農者の離農、農薬問題、減反、B
SE・・・。暗い話題ばかりが目立っている。

これまで北海道の農業は、国の施策に従い、日本の食糧基地として重要
な役割を果たしてきた。その時代では、国の施策に従い、お上(中央政
府、農協)から言われるままに経営していればよかったものの、いまや
グローバル化の荒波にもまれ、その政府がふらついているように思われ
る。これからの農業はいろいろな意味で自立を求められよう。
この意味では、北海道の農を語るときに、食に対する理念や思想はもち
ろん重要であるが、その前に北海道の農業を「食える」状況にすること
が先ずすべきことではないか。とスローフードの文字を目にするたびに
思う事柄である。

普段、中小企業の経営者や起業家に接する機会が多いものとして
まず感じることは、北海道の農業は、もっと自分の判断でリスクとリ
ターンを考えていくべきではないかということである。農家は言わば一
軒一軒が経営者であるはずなのに、誰か(例えば、農林水産省や農協)
に言われたとおりにしかやらない。これでは、道具と原材料は提供する
から言われたとおりに作ってね、といって搾取される内職労働者と変わ
らないではないか。更に言うなら、パソコンを買ったら仕事を斡旋する
と騙す所謂「内職商法」というものがあるが、借金をさせて、そのお金
で投資させ、あとはせっかく作った作物が売れずに儲からなくても農家
の自己責任に転嫁しているのではとさえ勘ぐってしまう。

最近の中小企業はかなり厳しい環境をしいられているが、やる気のある
企業に対してはそれなりの支援策も用意されている。これに対し、農業
に関して支援策は多いものの、やる気のある農家を直接支援するという
より、圃場整備とか灌漑事業のように農業土木関係者(すなわち建設
業)や農業団体に対する支援が多いように思うのは気のせいか。また、
一般の中小企業では本業を伸ばすと同時に、新分野への進出や多角化を
図ったり異業種との連携を模索することが多いが、農業でも食品加工や
観光など農業関連・周辺分野との連携・進出をもっと進めるべきであろ
う。農業のみでは食えないと言って、土地の切り売りをしたり、農閑期
の土木作業アルバイトをしたりする前に、やるべきことはあるのではな
いか。もちろん、その前にまずやはり「儲かる農業」を目指すこと、す
なわち経済的な意味で再生産が可能な農業にしていくべきだと思ってい
る。

とある会議で発言のチャンスがあったため、既存の農業関係団体
の方々にこの「儲かる農家」というフレーズを提言してみるととたんに
「不謹慎」だと多くの方からお叱りを受けた。どうやら北海道農業界で
は農家は儲けてはいけない、という認識のもとにいるらしい。これで
は、将来の農業を担おうとする者が減るのも無理はない。もちろん、目
先の利益追求のみに走れば結局は消費者から見放されるだろうが、逆に
消費者から求められるものをつくっているなら少なくとも再生産が可能
なだけの利益を追求することは当然のことであろう。

地域で仕事に出かけたときに、実際に多額の収益を上げている農
家の何人かに「儲かる農家、というのは不謹慎か?」とインタビューし
てみると「儲かる農家結構、儲ける気がない農家のほうが問題」という
同意見を頂戴した。もしかすると、農家が儲かると困る人種が多く存在
するということか。確かに、儲かる儲からないは個人の才覚と努力によ
るものだから、儲かる農家と儲からない農家に二極分化し、農村コミュ
ニティが崩壊する懸念はある。しかし、現状でも既に離農が相次いでい
るのだから、むしろ新規参入の門戸を大きく開くべきではないか。

さて、冒頭の北海道におけるスローフードに話を戻そう。
スローフードと儲かる農業は全く正反対のものに見えるかもしれない
が、実は目指すゴールは同じである。そのゴールとは、地域における再
生産可能な農業の維持であり、それも行政による保護ではなく、消費者
の視点から実現するものである。確かに、安くて画一的なファースト
フードを好む消費者も少なくないが、このままでは地域の農業がなく
なって「昔からあるアレ」が食べられなくなってしまうという消費者が
声をあげてスローフードが生まれた。
道庁ではスローフードの普及・推進に力を入れているようが、目指す
ゴールが同じであるなら、まずやる気のある農家・新規就農者が存分に
力を発揮できる環境を整えることが優先課題ではないか。

現在の北海道農業は、理念は高邁かもしれないが、実態は中途半端な規
制・保護と既得権益のしがらみにしばられている気がする。例えば、消
費者を省みない片手落ちのコストダウンがBSEの問題につながったの
ではないか。世の中に、スローフードよりファーストフードを好む消費
者がいることは当然で、同様に、高い国産品より安い輸入品が好まれる
のは仕方ないが、安全だからという基準で国産食肉ではなく輸入食肉が
選ばれるというのは全く釈然としない。

製造業が弱く域際収支が赤字の北海道にとって農業は、これからも道外
から「外貨を稼げる」戦略産業であるはずだ。もちろん、日本国にとっ
ても食糧自給率を左右する重要な位置付けとなる。
この農業を維持していくためには、経済的な意味で再生産が可能な仕組
みを作っていく必要がある。「農業は儲かる」ということになれば、優
秀な人材の参入も増えるであろう。
「農業はかっこいい」そんな時代に早くなってほしいものだ。

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編集後記
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                  2004年4月20日

弘前城の桜がやっと咲き始めたようだ。桜前線が津軽海峡を越える
のはもう間もなくだ。
そういえば最近、「花見でジンギスカン」に違和感がなくなってきた、
というよりは楽しみになってきた。移住10年、私もすっかり北海道人に
なったのかもしれない。

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