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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.19
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 「北海道はやさしい 〜高遠菜穂子という生き方〜」
   石黒 直文(当会理事長)


  編集後記

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    2004年6月28日
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北海道はやさしい 〜高遠菜穂子という生き方〜
     
石黒 直文 当会理事長

 北海道が好きだ。空が美しい。空気がうまい。森、海 水。どれを
とっても日本列島の中で一番いい。
 しかし、自然もさることながら、私が一番好きなのは人間だ。北海道
の人たちの心のやさしさだ。悲しいまでの他人に対する思いやりの深さ
だ。

北海道の開拓の始め、北海道に移り住んだ人々は互いに助け合っていか
なければ生きていけなかった。ブルドーザのない時代、隣人の協力と馬
の助けがなければ1枚の畑だって生まれなかった。
木を切る、石炭を掘る、魚を採る、全ての作業が命を分け合った仲間と
の協同の仕事だったのだ。他人の足を引っ張っている暇などない。弱い
もの同士、手を繋がないでどうする。他人を蹴落として出世する、他社
を陥れて自分だけが儲ける、そんなことは北海道人のテキストにはな
い。北海道に来たら、来た人は助け合うべき仲間なのだ。友だちだ。争
うべき相手ではない。この仲間意識が北海道の競争力の弱さにつながっ
ているのかもしれない。しかし、北海道に暮らすものにとってはすばら
しい、金銭で計ることのできない宝物だった。

その精神の一部を見ようと思ったら、札幌ドームに行けばいい。北海道
日本ハムへの道産子の熱狂を見よ。コンサドーレに対するサポーターの
情熱を見よ。このふたつのチームについて、札幌に本拠を移すまで(コ
ンサドーレの前身は社会人の東芝)道産子は知らないか、知っていても
好きだという人は皆無に近かったろう。しかし、北海道にくれば来た日
から仲間だ。兄弟船だ。困っていることがあれば助けてやろうじゃない
か。

あっという間に応援組織ができる。組織ができたら、負けるから、弱い
から見捨てることは絶対にしない。名古屋から西の観客にとっては不思
議な現象だが、エラーしようが、ボーンヘッドであろうが、応援席から
ブーイングがもれることは、まず、ない。11連敗のコンサドーレサポー
ターが、首うなだれる選手に温かい激励のエールを贈った後、整然とゴ
ミ拾いをして引き上げていく。こんなサポーターは日本中探してもいな
いだろう(たまには勝ってくれよ!)

話は変わるが、過日、高遠菜穂子さんの著書「愛してるって、どう言う
の?」(文芸社刊)を書店で見つけてむさぼり読んだ。彼女は間違いな
く北海道人だ。愚直なまでの道産子だ。高遠さんって知らない?ほらイ
ラク人質事件で日本政府、マスコミから非国民のように叩かれた女性
だ。いじめ大好きの東京のマスコミは、彼女について、大麻やシンナー
を吸っていたとか、資産家の不良少女だとか、大失恋したとか、大は
しゃぎで書きまくった。

この本で、彼女が自ら明らかにしているように、自分を模索して不良と
挫折の少女時代があったことは間違いない。しかし、彼女は、30歳に
なった時、迷いに迷い、苦しみに苦しんだ末、本当の「愛」とは何かを
見出す。この本は、人質解放後に釈明のために書いたものではない。事
件の2年前に彼女の自分発見の遍歴を隠さず書いたものだ。

彼女は2000年から4年間、ベトナム、インド、ネパール、タイ、カンボ
ジアのストリート・チルドレンやエイズの末期患者とのふれあいのボラ
ンティアに身を投ずる。インドのマザーテレサが開いた「神の愛の宣教
者会」に参加することによって人生の決定的な転機にぶつかる。本当の
愛は、互いに傷つけあうほど激しいものだ。

彼女は、今年4月、イラクで人質になったが、彼女の行動は、日本政府
や一部のネオコン型マスコミが伝えているような思いつき、無謀、無責
任なものではない。彼女は、昨年のバグダッド陥落直後から4回にわ
たって一人でイラク入りをしている。昨年11月、イラクのストリート・
チルドレン、その多くは親を失い、シンナー漬けになっている子どもた
ちのためにアパートを借りて、多いときには20人の子どもを抱きしめ、
叱り、立ち直らせようとする。

その施設を維持拡充するための資金集めに北海道へ帰り、再びイラクに
向かったとき、捕らわれの身となる。イラク入国から解放までの経緯に
ついては67日の日経ビジネスで彼女自身が詳しく語っている(なぜこ
ういう取材を北海道新聞はしないのだ)。

彼女は、いま一人で外出できない状況にある。一人の女性が、自分の金
で、危険を覚悟でイラクに4回も赴いたのは、本当の意味の純粋な人道
支援に他ならない。それと同時に、「傷つくまで愛せ」という実践を通
して30歳にして始めて実現できた「自分としての生き方」を確立するた
めでもあったろう。死線を潜り抜けて解放されたとき、国家権力から、
それまでの人生で漸くつかみかけたものを全否定された。彼女が「イラ
クで体が焼き殺されることから免れたが、日本で心が焼き殺された」と
感じたのは当然であったろう。彼女の自著や談話によって、高遠菜穂子
という女性は、やわらかなナイーブな魂を持った人であることがよくわ
かる。だから、その魂が傷ついたのだ。

彼女が解放されて「イラク人は嫌いになれない。イラクの子どもたちの
ところに帰ってやりたい」といったとき、「まだそんなことを言ってい
るのか。自覚を持って欲しい」といった某国の首相がいた。一方、アメ
リカのパウエル国務長官は「危険を冒して子どもたちを助ける女性を日
本人は誇りとすべきだ」といった。

私たち北海道人は、北海道人の心のやさしさ、他人に対する思いやりの
深さを誇りに思っている。その意味で、高遠菜穂子さんのようなやわら
かな魂をもつ女性を生み出したことを誇りとしたい。幸いなことに、報
ぜられるところによれば、イラク人自らの手で家のない子どもたちのた
めの施設ができ「ナホコ」と名づけられたという。彼女のやさしさが、
戦乱のイラクの中に、鮮やかに残されているのだ。


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編集後記
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                  2004年6月28日

藻岩山に登った。札幌ドームJRタワーを見下ろしながらの冷たい
ビールはうまかった!
今夏は札幌の低山ハイキングを楽しむことにしよう。

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