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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.22
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 「地産地消の疑問」
   柳井正義(当会理事)

  編集後記

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               2004年9月29日

地産地消の疑問

最近、「地産地消」という言葉をよく耳にする。インターネット上で
「地産地消」で検索すると、数万のサイトがヒットし、ざっと眺めても
全国各地で地産地消の取り組みが行われていることがわかる。地産
地消とは、ご存知のとおり、「地元で生産されたものを地元で消費する」
という意味で、その意義は、地域経済(特に農林水産業)の活性化、
消費者と生産者の顔の見える関係といった経済的なものだけでなく、
「暮らしている地域で採れたものを食べることは身体によい=身土不二」
「地域の食文化の保存=スローフード」といった健康・文化・思想にまで
及ぶものである。また、北海道の山奥の温泉旅館でなぜマグロの刺身
を出すのか、観光客は地元の名物料理・特産品を期待してやってきて
いるのにという観光がらみの問題にもつながるだろう。
まあ、そんな難しい理屈つけんでも、新鮮で安全で美味いものが食え
りゃいいっしょ、という話かもしれない。しかし、いくら美味しくても
ホッケばかりでなくたまにはアジの開きが食いたい、とか、リンゴもい
いけど正月はミカンだよなあ、と思ってしまうのは筆者が道外出身者だ
からだろう。

さて、上に書いたように、今全国各地で地産地消運動が盛んだ。北海道
でも、道産品をもっと食べましょうと言っているが、ということは、道
外産品を食べる量を減らしましょうということにならないか。道民はア
ジはやめてホッケを食べましょうということではないのか。もしそうだ
とすれば、相手からも、じゃあ、うちらも北海道の産品は要りません、
地元産品を食べます、地産地消ですから、と言われることにならない
か。
周知のとおり、北海道の農業、漁業、食品加工業は基幹産業で重要な移
出産業である。日本という国が工業製品を輸出して石油や食糧を輸入し
ているように、北海道という地域は農産品・水産品を移出して換わりに
北海道で生産されないものを手に入れている。そして、北海道の域際収
支(国の貿易収支のようなもの)は入超で赤字である。一国のなかでの
都市圏と地方圏の関係であるから、赤字イコール悪いこととは言い切れ
ないが、地方の自立という観点からは問題とされよう。
もし、道外に対して売れるものが減れば域際収支はますます赤字になっ
てしまう。
食糧自給率という観点で考えると北海道の自給率は100%を優に超えて
200%
に近い数値と言われる(ただしカロリーベース)。すなわち、道民
が食べきれないほど生産しており、その余剰分は道外に移出されている
わけで、国全体ではカロリーベースの食糧自給率が40%台だそうだか
ら、日本全体から見ても北海道の食糧産業は重要である。
したがって、北海道の立場としては地産地消を進めることよりも、道外
に対しもっと我々がつくった道産品を買ってくださいということの方が
戦略上重要であろう。道外に対して、うち(北海道)は地産地消で自分
のところのリンゴ・ホッケを食べますからお宅(の県)からミカン・ア
ジを買いません、でも、うちのリンゴ・ホッケは買ってください、とは
いかにも主張しづらい。もちろん実際には、北海道では売れるほど?
(売るために?)食糧をつくっていて、他の都府県では食糧が足りない
のだから、北海道で地産地消を唱えたぐらいで買ってもらえないとは考
えられない。しかし、問題は買う側からすると北海道以外にも選択肢が
あることだ。それは、米国やオーストラリア、中国などである。
少し前までは、輸入食肉や輸入野菜というと安いけれどちょっとアヤシ
イというものだった。ところがBSE騒ぎを契機に、国産より豪州産牛
肉の方が安全、などと言われるようになってしまった。これでは情けな
い。もっとも最近では、米国のBSE問題や中国野菜の残留農薬など
で、やはり国産の方が安全と見直されるようになってきたが。地域経済
や健康・文化の観点だけでなく、食糧自給率改善の点からも北海道以外
の都府県で食品(農水産品)の地産地消を唱えることは重要である。た
だ北海道においては、道産食品をもっと道外に売り込むことがより重要
と考える。そして、売り込みのキーワードは、安全性、信頼性と付加価
値である。安全性については言うまでもなく重要な課題として、トレー
サビリティなど様々な方策が考えられるようになっている。信頼性につ
いては、一言で言えばウソのない食品、ごまかしのない食品を提供する
ことだ。今年になってから、いくつかの道産食品で偽装表示に関する新
聞報道があった。このようなことが繰り返されると、道産食品の信頼性
が損なわれしまう。表示に関しては、産地表示では主原料原産地、加工
地などの問題、品名表示では近似種(アブラタラバやカラフトシシャモ
など)をどう扱うかといった問題があり、ルールづくりが必要である。
が、根本はお客さまに納得して買っていただけることである。福岡名産
の辛子明太子の原料に北海道のタラコが使われていることはよく知られ
ているが、道産タラコを使っているのに福岡名産というのはおかしいと
いう人はいない。このタラコと辛子明太子の話は、高付加価値化の事例
としてもよく語られている。素材の良さだけに頼らず、消費者のニーズ
にあった付加価値を高めていくことも重要だ。なお、最近のスローフー
ドの動きなどで、道産食材ばかりにこだわるのもどうかと思う。例え
ば、北海道の昆布は関西や沖縄の食文化において欠かせない存在となっ
ていると聞いたことがある。食材と食文化は分けて考えてもよいだろ
う。
ここまでの主張をまとめると、こと食品に関しては、おいしくて安全な
ものは産地にこだわらず食べましょう、北海道にはそういうものがたく
さんあるからどんどん買ってください、ということである。そして、自
信を持ってそう言える北海道にしよう、と。

ところで、地産地消を進めるべきは食品よりも例えばITの分野だ。
サッポロバレーと囃され全国的にも注目されたが、道内のソフトウェア
企業の話を聞くと、道内からの受注は少なくて、首都圏の企業からの受
注が多いという。たしかに経済規模を考えるとそうなるのかもしれない
が、実は、道内の企業や官公庁はブランドイメージや大手だからという
理由で、首都圏の企業にシステム開発等を発注し、受注した首都圏の企
業が道内の企業に下請に出すことが結構あるらしい。結局、首都圏の企
業にピンはねされているわけで、だったら最初から道内のIT企業に発
注すればいいのにと思う。ITだけでなく、ほかにも道内でもやれるの
に道外から買っているものもあるだろう。そういうものでこそ地産地消
を進めてほしいと思う。

柳井正義(当会理事)

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編集後記
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                  2004年 2004年9月29日

先日このメルマガにて「農業が格好いい時代に=儲かる農業を」と暴論
を書かせていただいた後、農家の方や、経営者の方から「その通り!」
とお褒めの言葉を頂戴した。一方、長く農業や地域活性化などで地域と
のお付き合いが深い方からは「農業や地域で儲けようなど不謹慎だ」と
のお怒りの声もやっぱり頂戴 した。
暴利を貪るわけでもなく、シンプルに「経営」していくための「儲か
る」ことが何故そんなにいけないことなのかどうにも不思議だ。当方の
言葉が足りず誤解される部分があるかもしれないが、そんな言葉の
端々にケチをつけるよりも本質の問題点をもっと議論してほしいと思う。

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なお、今回も発行が遅れ、たいへん申し訳ございません。
読者の皆様からの「暴論」もたいへん楽しみにしておりますので
皆さんの投稿を心よりお待ちしてます。

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