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私設北海道開拓使の会メールマガジン『異論・暴論・創論』Vol.6
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  北海道の大学はどこに行く? そして市立大学は? 
    栗田正樹

  投稿ご紹介

  編集後記

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                     2003年5月19日

 □■□■□■  北海道の大学はどこに行く?■□■□■□■
           そして市立大学は?    
                        栗田正樹     
                       

大学が大変だ。現在、北海道に大学は36校。入学定員総数19,994名。毎
年二万人弱が入学する。独立法人化に向けて、国公立大学は統合・整理
・改革の波にさらされ、入学希望の若者は減り、私立大学は学生確保に
追われている。実学を身につけるのには専門学校の方が良い。一体いく
つの大学が残るのか? 北海道の大学は北海道に役立っているだろうか?

乱暴に書けば、北海道では北海道大学以外は受験生にとっては魅力の薄
い大学になりつつある。競争率は下がり続け、希望者は全員入学できる
という私立大学も複数出現している。入試の洗礼を受けず推薦で入学す
る学生の数も増えている。結果として当然基礎学力も問われる。

北海道大学でも「学力が低下した」と嘆かない教授にお会いしたことは
ない。夢中になって勉強する日本人学生は珍しいらしい。アジアの留学
生の勉強熱心さに感心したり危機感を感じたりしているとのこと。日本
の税金を使って留学生に勉強をさせているようなものだとの声もある。

さらに大学教授は嘆く「事務作業が多すぎる。本来の研究・教育に割け
る時間が少ない」 大学は会社ではない。利益追求の集団ではない。し
かし、事務方に経営的な視点が足りない。教授は大学の経営に危機感を
感じている。しかし事務方は大学の中だけしか見ておらず、官僚主義的
でサービス精神に乏しい。

現状をまとめると、北海道の大学はこれからとっても大変だし、具体的
に次代の展望が何も描かれていないのではないか? 危機感に満ちてい
るぞ、ということになる。

そんな中、札幌市立大学のプロジェクトが進んでいる。看護とデザイン
の高等専門学校が合体し、ユニークな大学が生まれようとしている。た
またま、二つの高専を一緒にしようという少し無理矢理な話だった。深
く考えた話ではない。あり得なかった組み合わせ。これが面白いと思
う。

市立大学が成功するためには

(1)
ナンバーワンにならなくていい。もともと特別なオンリーワン
 北海道ナンバーワンは北大に任せる。とにかく、他では絶対に受けら
れない教育をする。研究をする。大学の仕組みを作る。看護とデザイン
の合体。それって絶対オンリーワンだ。
 オンリーワンならば全国・世界各地からそれを目当てに人が集まる。
デンマークの椅子でストッケ社のザシットという椅子がある。これは腰
に良いと言うことで腰痛持ちのデスクワーカーの間では密かに有名だ。
この椅子、とても高い。なんと11万円。豪華とはほど遠いシンプルさで
ありながらだ。ここではデザインはオンリーワンとして価値になってい
る。デザインは付加価値ではない。価値そのものだ。医療技術とデザイ
ンが融合している例だろう。
http://www.scandex.co.jp/stokke/products/thatsit_index.html

 (2)
経営と教育・研究の分離
 教育・研究者と事務局では資質が異なる。教授らはタレントで、大学
の事務局はプロダクションのプロデューサーのようなものであるべきだ
と思う。教授は研究の壮大なシナリオを描くことはできるだろう。しか
し、一つのプロジェクトを運営していき、成功裏に完遂させるというた
ぐいの現実的なプロデュース能力を持つ教授は少ない。むしろ、そのよ
うなことが好きなら大学には残らないだろう。
 スタジオ・ジブリの成功の要因の一つに宮崎駿(タレント)+鈴木敏夫
(
プロデューサー)のコンビが挙げられる。互い尊敬しあえるタレントと
プロデューサーが必要だ。例えば、北野武は素晴らしい監督だが興行師
としては成功者ではない。

(3)
二つの学問を統合する概念の名前が必要だ。
 看護学科とデザイン学科ではいつまでたってもその組み合わせのユ
ニークさが生かされず、化学反応が起きない。その上位概念として「人
間生活学部」というような学部名が必要だ。統合する概念がなければバ
ラバラのままに終わる。オンリーワンになるためには両学部の交流・融
合が必須だ。

(4)
市立大学はイベント屋になれ
 大学の中で完結しないこと。積極的に街に繰り出し、野に出て、さま
ざまな人・モノ・コトに関わらなければならない。札幌を北海道をデザ
インし直すのだという志だ。看護士とデザイナーの卵は街に出るのだ。
村に行くのだ。ここでも、考える役割をもった教授と実行する役割のプ
ロデューサーが必須だ。企業との連携も教授だけでは難しい。

(5)
実学の大学では学歴は教授には無意味だ。教授は5年契約。
 つい先頃、建築家の安藤忠雄が東京大学教授を退官になった。61歳。
建築家としてはさらに大成すると思う。彼は高校卒業後、独学で世界的
建築家になった。東大にとっても安藤にとっても『実り多い5年半につ
いて彼は「高卒の教授をつくる勇気に感動した。学生たちと勉強でき、
充実した時が過ごせた」と振り返っていた』(引用asahi.com)
 東大はさすがだと思う。デザインは実学であり、デザイナーには「教
えたい時」がある。しかし、「教えてばかり」だと消耗する。デザイ
ナーは「モノを実際に作っていないと、教えられなくなる」のだ。「5
年契約の教授」が理想的だ。友人が北海道のデザイン系の大学で助教授
をしていた。彼は充電のため大学を辞めスペインに居る。それが、ある
べきデザイナーの姿だと思う。
 同様に看護についても教師が博士号を持っている必要はあるのか。現
場での経験が何より重要視される実学だと思うからだ。
 「札幌市立大学では5年以上専任教師として教えられない」という規
則を作るのだ。そして、一度教授になった先生達は非常勤講師となり、
「教えたい時に」教えに戻って来れば良い。5年で一区切りの研究をす
る。教育をする。現場と大学とのエネルギーの好循環が発生する。

(6)
タレントは入れ替わるが、プロデューサーは安定している。
 プロデューサーが次々と入れ替わるのはつらい。大学の性格が変わる
からだ。プロデューサーは後継者をきちんと育てなくてはならない。も
し、札幌市から事務職員出向などということがあるなら、それだけでこ
の大学は失敗だ。3年ごとにプロデューサーが変わってしまえば新しい
大学は成り立たない。

(7)
非常勤講師の有効活用
 非常勤講師として3つの大学に勤めた経験から言えば
給与が安すぎ
教授との連携が希薄
他の教科との連携がない
給与水準を上げ、積極的に大学の教育全般への関わりを深めてもらい、
専任講師並みの出力を要求すべき。時には少人数の学生の生活指導にも
関わってもらう。彼らの多くは企業に所属し、実学の世界に居る。部下
の指導には慣れている。その力を最大限いただくのだ。
 短期集中講義をしてもらう。東京在住の看護関係者やデザイナー、世
界各国からの非常勤講師だ。彼らには毎週の時間はない。だから集中的
にセミナーを開いてもらう。そのセミナーを広く市民に開放することも
可能だ。
 セミナーは記録され、ウェブ上で出版されるだろう。

(8)
稼げることはどんどんやる
 大学だからといって稼げないことはない。実学の大学だからこそ、周
辺の企業との連携で、意匠登録・特許・商標登録・ビジネスモデル特許
など、できることは山のようにある。出前講義も稼ぐための一つの方法
だ。市民の税金を最大限有効に使うのだ。

(9)
看護学科の卒業生は病院看護のリーダーになれるくらいにする。デ
ザイン学科の卒業生は札幌で起業できるくらいにする。
 札幌出身の学生さん達はこの住みやすい札幌に就職したいのだ。しか
し、就職先としてはそんなに期待できない。だったら、独立して東京か
ら仕事を持ってこられるくらいの力をつけてもらいたい。そのためには
どんな大学にすればいいのかを考えよう。学生を実践的に仕立て上げる
ためには何が必要なのだろう?

と、ここまで書いてきた。さて、私が文部科学省の大学設立に関する規
則を知っていたら、こんな文は書けないのかもしれない。しかし、看護
士とデザイナーのように「人間の生活」に密着した職業人を育てるには
「人間の本質に立ち返って」モノゴトを考える必要がある。その中から
回答は引き出させるのだと信じている。

北海道に、そして札幌に本当に必要な大学は何か? さらに、議論を
し、青写真を丁寧に描いていく必要があると思う。

有限会社ソノーク 栗田正樹


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 投稿ご紹介
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現実を直視しないと、あとあとで大しっぺがえしを喰らうものであり、
札幌移住を考える者として、今後もしっかり見つめていきたいと思って
います。どうもお疲れ様でした。

さて、「心だけは札幌市民」の自分にとって、近年「この街は、ほん
とうに大丈夫なのか!?」と思うほどがっかりした事があります。

(1)昨年秋の、西友牛肉返金騒乱
東京、いや国内の都市のどこでもありえる事かもしれませんが、より
によって札幌だったのにはショックでした。 (バグダッドや地震直後
のLAじゃあるまいに)自制力をなくした集団心理の恐ろしさをつくづ
く考え込んでしまいました。

(2)つい先日の市長選の低投票率と、それによる選挙の無効と再選
投票を棄権した愚民に向かって
「自分たちの街だろう!レジャーに行くことよりも大事じゃないのか!
自分の納めた税金がちゃんと住環境に反映されるか取引業者のワイロに
されるかがその一票にかかっているんだぞ!」と言ってやりたい程ムカ
つきました。

すいません、つい怒ってしまいました。
それでも僕にとって札幌は未だ聖地であり、必ず目指す街であります。
実際都内の喧騒にもまれている者にとって、千歳空港からのJRの電車
が豊平川を渡る時の心の高鳴りは、前回でもまったく変わっていませ
ん。

埼玉県在住 男性

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 編集後記
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                     2003年5月19日 

コンサドーレ札幌が勝てない。助っ人がイカン、監督の采配がイカン
ディフェンスがなっとらん。J2の試合の翌日には、朝の挨拶の中に
コンサの話題があがる。
そういえば関西に住んでいるとき、朝の「おはよう」の前に「昨日は
バースのホームラン大きかったなぁ」と阪神タイガースの話題が
真っ先にあがった。それだけ地域に野球と球団が馴染んで生活の
一部、文化になっているということだろう。とすると、札幌にも
サッカーがようやく生活文化の一部になったということであろうか。
日ハムのサブ移転に伴い、札幌でも仕事帰りに野球を見に行く、
という選択肢が増えた。今年は札幌ドームの試合数は少ないが、
西武の試合も含めて、プロ野球をライブで見られる機会が増えた
のは至極うれしい。いつか日ハムの勝ち負けが札幌で挨拶に加わる
日が来るのだろう。
しかしながら、コンサにはJ1に復帰して欲しいものだ。


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