新年ご挨拶 ― ONE TEAMに思う

 新年あけましておめでとうございます。皆様にはお揃いで、希望に満ちた新春をお迎えのことと心からお喜び申し上げます。

 昨年の第9回ラグビー・ワールドカップは素晴らしかったですねえ。この頑張りに多くの日本人が感動しました。日本チームのモットー「ONE TEAM」が、新語・流行語大賞に選ばれたのも当然でしょう。日本は、1987年の第1回から参加していますが、これまでの成績は4勝22敗2分でお世辞にも強いとは言えない。この負けの中には、実に1試合145失点という歴史的屈辱の試合もあります。それがなぜ急に強くなったのか。その最大の理由はチーム構成メンバーの多様化です。今回の日本チームの半分は、海外から来たラガーたち。ヘッドコーチはニュージーランドのジェイミー・ジョセフ、キャプテンはご存じフィジー生まれの母を持つ札幌山の手高校出身のリーチ・マイケルです。

 いま、わが国を訪れる外国人が口をそろえて日本社会の問題点として指摘するのは、まだ日本は260年の鎖国が続いているかと疑われる閉鎖性です。どの会社を訪問しても、どの会合に出席しても、出てくる人物は、暗黒色の背広に眼鏡の中老の紳士ばかり。大事なところにはガイジンや女性を入れない防除ネットやガラスの天井があります。人口に占める外国人比率は2%に満たず、女性の社会進出ランキングは世界153国中121番目です。その意味から考えると、「ONE TEAM」が2019年の新語としてトップに取り上げられた意味は決して小さくありません。今回の入賞は、一つの目的に向かって全員が心を合わせたからではありません。日本人だけでチームワークを作り上げた事例はいくらでもあります。そうではなくて、肌の色も違い、言葉も、思想も、人種、国籍も違うラガーマンが、壁を乗り越えて、ONE TEAMになった。日本人が最も不得意だった多様性の上にチームを築き上げたことに歴史的な意味が認められたからだったのではないでしょうか。

 実は、25年前、私どもが「私設北海道開拓使の会」と名乗ったのは、明治初年の黒田清隆をリーダーとする北海道開拓使が持っていた発想の多様性、先進性に惚れ込んだからです。黒田長官は、自分の給料の2倍半を支払って海外から米国農務長官のケプロンを開拓使顧問に招聘します。札幌農学校教頭には現職の農科大学長クラーク博士を迎えます。学生も出自、身分を差別しない。後の北大総長になった1期生佐藤昌介、2期生の新渡戸稲造はいずれも朝敵だった南部藩士の子弟です。また、黒田は女性を北海道開拓のカギと位置付け、5名の女子を日本初の米国留学生として送り出します。そのうち津田梅子は津田英学塾の創設者、大山捨松は大山元帥夫人、瓜生繁子は海軍大将夫人で上野の音楽学校ピアノ科教授。そのいずれもれもが朝敵だった幕臣、会津藩士の娘だったのです。

 私は、今から57年前、京都生まれの妻を連れて、大阪から道央の滝川に移り住みました。春4月、山は残雪に包まれていましたが、北海道の人々は、誰一人身寄りのない余所者の私どもを温かく心を開いて迎えてくれました。その嬉しさを今もって忘れることはできません。25年前、この会を作るとき「北海道に来る者はみな仲間だ」と迎え入れた明治の開拓使の先人の包容力に学びたい。そこが北海道の出発点だと考えたのです。

 今年が、皆様にとって心温まる良き年であることを切に祈り、ご挨拶といたします。
令和2年 元旦

NPO法人 私設 北海道開拓使の会 理事長 石黒直文